劇とカフェと、猫が好き

綿貫美月です。演劇やカフェ、日常のふと思ったことを綴ってます。

鍋セット

鍋セット。

 

ってなんや、ってなりますよね。

 

これは、私の大好きな小説『Presents』(角田光代さん作)の中の、短編集の中の題名です。

 

 

『鍋セット』の簡単なあらすじは、上京し一人暮らしする子が、荷造り手伝ってくれた母から鍋セット(鍋3種類)をもらう話。

(すごく心があたたまる話で、元気をもらえるので良ければ読んでみてください)

 

このお話、色々好きなところがあるんですが、一番共感するのが、

『しんどい時に料理をして気持ちを安らげる』

ってとこなんです。

 

↓小説の中で、それが綴られている部分です。

ひとりの夜が意味もなく不安に押しつぶされそうになったとき、私は鍋を取り出した。大鍋で、牛のすね肉をぐつぐつと煮る。玉葱が飴色になるまでひたすら木べらでかきまわす。ホールトマトをかたちが崩れるまで煮る。スープのアクをていねいにすくい取る。汗を流しながら、ときには涙と鼻水まで垂らしながら。そうしていると、不思議と気持ちが落ち着くのだ。だいじょうぶ、なんてことない、明日にはどんなことも今日より良くなっているはずだ。鍋から上がる湯気は、くつくつというちいさな音は、そんなふうに言っているように、私には思えた。

出典:角田光代『Presents』双葉社,2008年,p66,67

 

め、めちゃくちゃわかる………。

 

 

楽しい時もしんどい時も、なんだかんだこの鍋セットを使って料理をすることが綴られているんですけど、とくにこの部分にめちゃくちゃ共感しました。

 

そうなのよ、料理って不思議な力があるのよ。

 

辛くて、自分の価値が分からなくなるようになったり、不安や悲しみで心がいっぱいな時。

 

そんな時にひたすら料理をする。

そうすると、なんだか、気持ちがすっきりするんです。

玉ねぎを切って、出てくる涙が玉ねぎのせいなのか、それともそれ以外なのか。

どっちかなんて分からないけど、何かを流すことですっきりすることもある。

 

それから具材をひたすら炒めたり煮込んだり、そうしていると、いつの間にか心が落ち着いてくるんです。

 

それで出来上がったごはんを見て、味わって

 

「大丈夫。こんなに美味しいもの一人で作れるんだから。大丈夫だよ」

 

って、なんか料理に?肯定してもらえたような気持ちになる。

自分で作った美味しいもの食べて、心も体も満たされる。

 

(私がよくやる心のリセット法でもあります)

 

自己肯定感も上がるし、美味しいご飯が出来上がるし最高。

これで作り置きなんかしておくと、

「疲れた〜( ;  ; )」

って時でも、冷蔵庫あけると、おいしいごはんが出迎えてくれるんです。

なんか幸せな気持ちになって、また明日も頑張るか〜ってなる。

 

まあ脳内が単純な私だからかもしれないですが、料理がおすすめなのは本当です⿻*.·

 

ということで、また今週末、何か作り置きつくろ。

 

ちなみに私も鍋セット、ぽいのもらいました。

(家にあった余りの鍋だったけど笑

元々お母さんの本だし、小説ぽくプレゼントして欲しかったな…というのはあまりに欲張りなのでやめときます笑)

 

そういえば、この本、角田さんの小説の中で一番朗読劇に選ばれてるみたいで。

今度おうちで、声に出して読んでみようかな。

 

イラストも含め本当に素敵な本で、他にも良い話がいっぱい。

私の思考にすごく響いた本なので、どこかで他の話も少し紹介したいですね𓂃𓋪◌